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知財・無形資産をゲームチェンジにつなげよ~政府指針案

執筆者の写真: THE CODE 編集部THE CODE 編集部

2021年12月20日、政府は「知財・無形資産の投資・活用戦略の開示及びガバナンスに関するガイドライン」を公表しました。企業は知的財産・無形資産を重要な経営資源ととらえるべきであることや、それを全社で共有し、戦略的に社外(投資家)に発信していくことの必要性などが提言されています。

6月のコーポレートガバナンス・コード改訂でも初めて知的財産にかかわる項目が盛り込まれたように、知的財産・無形資産に対する注目は高まっています。本ガイドラインは、その現状がより詳しく分析され、企業や投資家の行動指針としてまとめられたものになります。


企業のガバナンスと投資家のエンゲージメント活動の進展へ

背景には、知的財産・無形資産の投資や活用において日本が海外先進国から大きく遅れており、それが日本企業の競争力低下につながっていることへの政府の危機感があります。加えて、実際は知的財産・無形資産を有していても、それが企業価値向上につながっておらず「もったいない」状態にあることも問題視しています。


ガイドラインのサブタイトルに「〜知財・無形資産の投資・活⽤戦略で決まる企業の将来価値・競争⼒〜投資家や⾦融機関等との建設的な対話を⽬指して」とあるように、企業側の努力だけではなく、投資家や金融機関がエンゲージメント(建設的な対話)を通じて知財・無形資産の投資と活用を促す役割にも触れています。


政府の情報発信が積極化している状況を見ると、今後、企業のガバナンスや投資家のエンゲージメントの動きが、知財・無形資産の領域で大きく加速することが予想されます。以下に本ガイドラインで掲げられた5つの原則を紹介しつつ、提言の内容を簡単に確認していきます。


企業は知財・無形資産に大胆な投資を

原則の1つ目は、知財・無形資産を活用した高付加価値を提供するビジネスを展開することで価格決定力を持つ、あるいはゲームチェンジ(競争環境の変革)につなげることを求めています。安易な値引きに走ることなく、イノベーションによってより優位な競争環境を作り出すことで、持続的な企業価値向上につなげてほしいという考えです。


2つ目には、経営者が知財・無形資産投資を「費用」でなく「資産」の形成ととらえ、大胆な投資をすることを求めています。それにより投資家からは中長期的な企業価値向上に意欲があるとみなされ、融資時の事業性評価も高まることが期待されています。

3つ目にあるのは「ロジック/ストーリー」としての開示・発信です。これは、自社の強みとなる知財・無形資産がどのように企業価値増大につながるかを説得力あるストーリーとすることで、それぞ全社に共有し、投資家に対してもわかりやすく開示することが提言されていいます。


4つ目は全社横断的な体制整備とガバナンス強化です。社内の幅広い知財・無形資産を全社的に取り扱い、それを取締役がモニターできるようにし、戦略立案としても活用することが求められています。

政府が知財・無形資産の活用を後押ししていることもあり、企業の知財・無形資産の取り扱いや、その開示については、すでに様々な取り組みが見られます。本ガイドラインでも、研究開発投資の見える化に取り組むエーザイなどの事例が紹介されています。知財・無形資産の価値を測定する外部の専門機関によって自社の価値を測り、それを外部に戦略的にアピールすることによって、投資家の評価を高めることの必要性についても触れられています。



投資家は知財・無形資産の活用をエンゲージメントのテーマに

原則の5つ目には、投資家や金融機関に向けての提言が含まれました。知財・無形資産への投資・活用が活発化するには、投資家がその価値を正しく評価し、それを企業とのエンゲージメントに活かしていくことが重要との考え方です。

本ガイドラインでは、スタートアップ企業ながら知財・無形資産を活用した大規模資金調達を実現したSpiber社の例、非財務情報である顧客提供価値を「経営レポート」で見える化し、融資に活用しているきらぼし銀行の例などが紹介されています。

近年、重要ワードとなっているESGへの取り組みにおいても、環境負荷の高い事業活動を避けるといった制約の面だけではなく、カーボンニュートラルに貢献する技術への投資・活用を評価するような投資機会としての面にも注目すべきであるとしています。

国際社会で日本企業の存在感を取り戻すためにも、待ったなしとなった知財・無形資産への取り組み。企業と投資家それぞれが意識を高め、より良いエンゲージメントにつなげていくことが期待されます。



無形資産の価値について (Spiber社の事例|THE CODE記事)





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