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コーポレートガバナンス・コードを意識したリキャップCB発行



2021年4月14日、工作機械や工具の専門商社である山善(8051)(時価総額1,000億円)が100億円のユーロ円転換社債発行と60億円の自己株式取得(ToSTNet-3)を発表した。


参考)


自己株式取得により「資本」を減少させると同時に転換社債発行で「負債」を増加させることで、自己資本利益率(R O E)を増加させることを企図した、典型的な「リキャップCB」である。


転換社債は5年、ゼロクーポン、オーバーパー(103)発行、転換制限条項が付された転換抑制型の設計であり、同日の条件決定により4月14日終値対比23.05%アップの1,292円で転換価額が設定された(CBの潜在希薄化率8.2%。自社株取得実施後のネット希薄化率は2.2%)。


なお、残りの資金使途は生産性向上と業務効率化のためのシステム投資に充当される。過去5年自己資本比率は増加(2016/3の32.3%→2020/3は41.3%)した一方で、2019年にROEが8.6%まで下落、かつコロナ禍もあり更なる利益の減少に伴い、今後は資本効率性を改善する方向に舵を切った。


また、当社は政策保有株式の相互保有が資本コスト対比で合理的な説明が困難となったことから「溶け合い」を推進し、合意が取れた取引先からの市場売却による株式需給の短期的な影響を軽減する目的も勘案して自己株式取得規模を設定している。


本年より強化される「コーポレートガバナンス・コードへの準拠」を正面から意識したリキャップCB初めてであり、新たな動きとなる可能性がある。今後は当社の政策保有株式の削減状況が注目される。


【リキャップCBとは】

財務手法の一つで、新株予約権付社債(CB)の発行により得た資金で自社株買いを行うというもの。CBの発行にともない企業の負債は増加するものの、自社株買いにより資本を圧縮できるので自己資本比率が低下して結果的に株主資本利益率(ROE)が引き上げられる。ROEを高めて株式市場で評価を得ることが同手法を利用する企業側の狙いとしてある。

(引用:野村證券株式会社 証券用語解説集 リキャップCB

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