マネックスグループ(8698)は、100%米国子会社のTradeStation Group(トレードステーショングループ)を米国のSPAC(特別目的買収会社)であるQuantum Fintech Acquisition CorporationとのDe-SPAC(SPACとの統合)を通じてニューヨーク証券取引所(NYSE)に上場することを目指すことを発表すると同時に、De-SPAC後の上場会社にマネックスグループと共同で投資する、Galaxy Digital グループ(暗号資産のアセットマネジメント事業やトレーディング事業等を手がける世界有数の暗号資産関連企業)から約54億円の第三者割当を受けることを発表した。
出典
本件は、本邦企業の子会社がSPACとの統合(De-SPAC)を通じてNYSEに上場する最初の案件となる。
TradeStation Groupはマネックスの米国証券子会社であるが、本件De-SPAC及び統合後に行われるPIPE(上場会社への私募出資)を通じて316.3百万ドルを調達することになる。
SPACであるQuantum Fiintechの現金保有額 :201.3百万ドル
Galaxy Digitalを含むPIPE投資家 : 65 百万ドル
マネックスグループ(PIPE) : 50 百万ドル
なお、親会社であるマネックスグループは50百万ドルの追加出資を行う予定であるが、Galaxy Digitalへの第三者割当増資による55億円調達することを同時に発表しており、マネックス本体の増資資金がTradeStation Groupへの追加出資資金に充当される予定である。
本件De-SPAC及びPIPEを通じて、TradeStation Groupはマネックスの100%非上場子会社から81.5%上場子会社になることが予定されている。
本邦上場企業の海外子会社がDe-SPACを通じた上場をすることも真新しい取引で注目に値するが、さらに注目すべき点はTradeStation GroupのDe-SPACにあたっての株式価値が開示されることに加えて、マネックスグループが独自で計算した自身の株式価値(サム・オブ・ザ・パーツ法)を開示している点にある。
マネックスグループの資料によれば、マネックスグループの株式会社は6,500億円と試算されている。
マネックス証券 :1,600億円
コインチェック :3,500億円
TradeStation :1,450億円(約13億ドル)(De-SPAC前)
完全子会社のDe-SPACはカーブアウトに他ならず、本件取引はマネックスグループが現在必ずしも十分に株式市場から自身の株価に評価されていないと考えるTradeStation Groupの価値をDe-SPACを通じて顕在化させることを企図した取引といえる。
現在のマネックスグループの時価総額(11/4終値ベースで1,930億円)は上記のマネックス証券の価値1,600億円に330億円程価値が上乗せされていると解釈しうるが、コインチェック及びTradeStationの価値(合計4,950億円相当)はマネックスグループの現在の時価総額には全く反映されていないことになる。
また、マネックスグループ本体の第三者割当に応じたGalaxy Digitalとしても、理論的な株式価値が十分に反映されていない(割安な)マネックスグループの現在の株価にて資本参加することで、TradeStation Groupの価値の顕在化を通じたマネックスグループの株価アップサイドを見込んでいると判断しているとも解される。
マネックスグループとしては、本件De-SPACを通じて、
TradeStation Groupでの316.3百万ドルの資金調達、及び
TradeStation Groupの価値の顕在化を通じた、マネックスグループ本体の株価評価の見直し(ある種のコングロマリットディスカウントの解消)
を同時に企図していることが考えられる。
本日のマネックスからのメッセージを明日以降の株式市場はどのように受け取ることになるか、注目される。
編集部補足:記事発表当日(11/5)9:25時点のマネックスグループの株価は872円(前日比+127円、17.05%アップ)となっている。
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