
6月29日、マツダ(7261)は既存の劣後ローンの借り換えを目的として、新規の劣後ローンの調達を発表した。主な条件は以下の通り。
借入額:金700億円(予定)
資金使途:既存劣後ローンの返済に充当
契約締結日:2021年6月29日
融資実行日:2021年7月20日(予定)
弁済期日: 2081年7月20日(但し、2026年7月20日以降の期限前弁済が可能)
リプレースメント条項:同等の資本性以上の資金調達による借換(適用除外要件あり)
利息支払に関する条項:繰延可能
劣後特約:あり
格付機関による資本性評価:クラス3、50%(R&I)
貸付人:三井住友銀行、三井住友信託銀行、日本政策投資銀行、広島銀行、山口銀行、もみじ銀行(2012年、2016年も同様)
本劣後ローンは、2016年に実行された既存の劣後ローンの借り換えだが、その既存ローンについても、もともと2012年に実行された劣後ローンの借り換えだった。
2012年と言えば、業績が大幅に悪化する中で、資本充実と新興国向けの資金調達を行うために、大規模な希薄化を伴う公募増資と劣後ローンによる計2000億円を超える大型資本調達を行った年であり、今回もその調達の延長線上にあることになる。
今回の劣後ローンのコストの開示はないものの、2012年の劣後ローンの金利水準であるT+4.75%(5年後、1%ステップアップ)からは相当程度引き下げられていると推測される(2016年の時点では金利削減の開示あり)。
しかしながら金利が低水準であったとしても、現在のマツダの財務状態を鑑みると、利益の蓄積により自己資本は十分に拡充されており、リプレースメント条項の適用除外要件は充足していたとみられ、現金での返済も選択肢としてはあったはずではある。
格付け機関R&Iのレポートによれば、「2022年3月期は新型コロナや半導体不足の影響が残る中で、米国の新工場立ち上げに伴う投資拡大を予定している。また大型車の新商品拡充を控えており、これからカーボンニュートラルに向けた電動化対応の投資増も想定される。こうした要因が株主資本比率にマイナスに働く可能性があり、今回の劣後ローンは、そうしたリスクへの備えとする。」と調達理由が付されているが、発行会社自身の開示により全額借り換えに踏み切った理由を示して欲しかったところである。
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