2021/6/17に公表された、IREIOJ合同会社及びMARIOJ合同会社(いずれもインベスコグループ)によるインベスコ・オフィス・ジェイリート投資法人に対する公開買付けが2021年7月27日に成立した。
買付け等の概要 買付予定数 :8,802,650口(下限:4,761,794口、上限:なし) 買付期間 :6/18-7/27 買付価格 :22,750円/口 決済の開始日 :8/3
買付け等の結果 応募投資口 :5,726,676口(買付予定数の65%)
結果として、Starwood Capital による更なる対抗TOBはなされなかったことになる。
今後は、スクイーズアウト手続等を通じて残存投資口が全て取得され、本投資口は上場廃止がなされることになる。
4月上旬のStarwood Capitalによる公開買付けの開始から、公開買付価格は以下のように推移した。
4/7 Starwood 20,000円 (直近NAV17,684円比13.1%プレミアム)
5/10 Starwood 21,750円 (直近NAV17,684円比23.0%プレミアム)
5/20 インベスコ 22,500円 (直近NAV17,684円比27.2%プレミアム)
6/1 Starwood 22,500円 ( 同上 )
6/11 インベスコ 22,750円 (直近NAV17,684円比28.6%プレミアム) :7/27に成立
なお、Starwood Capitalが4/7の公開買付け発表時に保有していた527,079口(5.95%)の投資口にかかる簿価については、3/25の大量報告義務発生分(5/10に訂正変更報告あり)で保有が報告されていた446,500口(5.07%)の簿価14,228円/口(取得代金と保有株数より算定)しか判明しておらず詳細は不明であり、かつインベスコのTOBへの応募の有無は今後の大量保有報告の変更報告の確認を待つ必要があるが、一定のキャピタルゲインは発生した(またはする)と考えられる。
本邦初のJREITの非公開化案件は、第三者からの敵対的公開買付けに端を発し、下記の様々な論点について公開買付者及び発行体との間で討議がなされた。
2段階買収ストラクチャー(特にスクイーズアウト手続)にかかる投信法及び金商法の適法性
強圧性の有無
投資主総会による意思確認の要否
一旦はストラクチャーの適法性疑義を理由の一部としてStarwood CapitalへのTOBに反対表明をしていた発行体が、投資法人の運用会社のグループ会社による対抗TOBに対して、結果としてほぼ同じストラクチャーに賛同表明し成立することで決着した案件となった。
所感
もともとJREITは一般事業会社と異なり資産(不動産)運用の器としての性格が強いことに鑑み、4月7日にStarwood Capitalによる公開買付けが発表された段階から、THE CODE編集部としては、最終的な公開買付けの成立要因は公開買付価格の十分性のみで決まることを想定していたが、本件は公開買付価格の引き上げ合戦を経て決着し予想通りの展開となった。
今後は本件公開買付価格のNAV対比28%程度のプレミアムという水準がJREIT非公開化前提TOBにかかるトランザクション・マルチプルとして意識される水準になることが想定される。
今回、JREITの非公開化を前提とした公開買付け案件が本邦で初めて成立したことになるが、資本によるガバナンス/本邦資本市場の活性化という観点からは、JREITでも一般上場会社同様、公開買付けによる非公開化が有効な手段として実現したことの意義は小さくない。
投資法人のスクイーズアウト手続きの可否は従前より投信法において解釈に幅がある領域であると承知しているが、本件公開買付の成立を契機に、法曹界における再度の議論、評価が改めてなされることを期待したい。
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