「知的財産推進計画2021」重点分野と論点[5]

更新日:2021年12月23日



本記事では、引き続き内閣府の知的財産戦略本部が2021年7月31日にまとめた「知的財産推進計画2021」で示された重点7施策について、THE CODE編集部の知見も交えつつ紹介していく。


施策6:知財活用を支える制度・運用・人材基盤の強化


経済・社会環境の変化に伴い、知財制度も機動的な対応が求められている中、事実上の行動規範としてのソフトローの活用が注目されている。ソフトローは、作成や改変の容易さ、状況に合わせた作成・運用など、法改正によらずに、柔軟な規範の変更が可能という利点があるとされる。


ソフトローの概念は広く、様々な切り口で分類が可能であり、例えば、(ⅰ)抽象的な民事規範をガイドライン等で具体化するもの、(ⅱ)抽象的な行政規範を民間自主規制等で具体化するものに分類することができる。


一方で、ソフトローは「優越的な立場の者が策定する場合、濫用される懸念がある」、「業界団体による場合には、参入障壁として働く可能性がある」といった意見もあり、行政の参画が求められる場合があることに留意すべきである。


また、知財の適切な保護・活用を図るためには知財紛争解決に向けたインフラ整備が必要不可欠であり、これまでも、知財紛争解決に向けたインフラの整備に向け、査証制度の導入や損害賠償額の見直しなどが法改正により行われてきている。


国際仲裁の活性化に向けては、2020年5月に外国弁護士による法律事務の取扱いに関する特別措置法の改正が行われていたり、国際仲裁専用施設のオープンや仲裁人・仲裁代理人等の人材の養成、国内外の企業等に対する周知・広報が行われていたりするなど、国際仲裁の活性化に向けたインフラ整備も進められている。


日本の特許出願が停滞する中、中国文献は世界における特許文献の約7割を占めるなど、外国特許文献の調査が増え続けている状況を踏まえ、特許庁では、産業構造審議会知的財産分科会基本問題小委員会において、2021年2月に「ウィズコロナ/ポストコロナ時代における産業財産権政策の在り方」を取りまとめ、特許審査制度や商標審査制度について、プロセスの効率化や国際出願に向けた環境整備等の対応を図ることとしている。


他方、産学連携の取り組みなどにより大学の研究成果をもとにした知財が日本のイノベーションを創出するエコシステムに組み込まれ、循環の誘発剤になることが期待されるが、日本の大学研究者の特許出願件数はいまだに低い水準にあり、知財マネジメントのリソース不足や論文としての成果を上げたい大学と事業化を優先する企業のスタンスの違いにより産学連携が進まないなどの課題があるとの指摘から、その改善に向けた検討が必要といえる。


また、豊かな創造性を持った人たちを育む教育現場として、学校と地域社会との効果的な連携・協働を図りながら、小中高等学校及び高等専門学校において、「新しい創造をする」こと及び「創造されたものを尊重する」ことを楽しく学び育む教育である「知財創造教育」の全国的な普及を目的として、2017 年1月に「知財創造教育推進コンソーシアム」が設置された。


本施策にて言及のある産学連携における諸課題ついては、オープンイノベーションの弊害・阻害要因として語られることも多い。THE CODEで取り組む、知的資本の定量化の取り組みは知的財産のポテンシャルを適切に評価し、知的財産の経済的・財務的価値算出にも適用可能であることから、斯様なインフラ構築の重要なピースの一つであると認識している。


施策7:クールジャパン戦略の再構築

CJ戦略の再構築

(出典:「知的財産推進計画2021」)


新型コロナの影響によりクールジャパン(以下CJ)の取組は大打撃を受けているが、CJ戦略再構築にあたっては、大枠の考え方は変えずに、他方で社会のデジタル化の加速、人の移動や集会の制限、人々の価値観の変化等、CJ戦略策定時には考慮されていなかった環境の変化を踏まえ、「価値観の変化への対応」、「輸出とインバウンドの好循環の構築」及び「デジタル技術を活用した新たなビジネスモデルの確立」の3点を新たに重視するべき事項として追加するとともに、CJ戦略を進めるための手段である「発信力」及び「CJを支える基盤」の2点を強化することで、CJ戦略を再構築している。


CJ戦略再構築の概念図

(出典:「知的財産推進計画2021」)



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